あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。



「私が来たかったのはここでーす!」


ご機嫌なハルが立っているのは、デパートの三階にある女性向けアパレルブランド店の前。

やはりクリスマスイブのデパート内は、いつもより人が少ない。

まあ……そりゃあ、そうか。

普通の人はクリスマスイブに服なんて買わないと思う。きっと、家とかお洒落なレストランで家族や友達、恋人同士の時間を楽しむんだ。

そんな中で俺とハルは……


「なんでここなの」

「服が欲しかったから?」

「なんで疑問系」

「もう、つべこべ言わないでよ!服が欲しいのに理由なんてないし、ここに来たかったのにも理由なんてない!」

「でも、なんで今日なの」

「なんでも!ほらほら、ちゃちゃっと見ちゃおうよ」


手を引かれ、半強制的に店内へと入れられた俺の額にはうっすらと冷や汗が浮かんでいた。

こんな女性物の服しか扱わないブランド店に足を踏み入れることなんて初めてだった。

やらしいものが置いてあるわけではないけれど、目のやり場に困るし、なんだかスタッフの視線が痛い。

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