あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。

「ねえ、敦くん」

「……なに?」

「このお店の中で私に似合うなって思う服探してみて」


ハルがお店を見渡してにこりと笑った。

俺も同じように店を見渡したけれど、カウンターの中にいる女性スタッフさんと目が合い、視線を下の方に向けた。


「無理。選べない」


女の子に似合う服とか、選んだ事も無ければ考えた事もない。そういうのは、正直難しくて分からない。

そう思いながら少しずつ視線をずらしていくと、何故か目に止まったベージュのダッフルコート。

……そういえば、ハルがこういうの着てた。

ダッフルコートに、白いミディアム丈のスカート。いつも、全体的に女の子らしい格好だったな。

過去になりかけている彼女のデート服を、呑気に思い出していた俺の目の前に突然並んだ二つのスカート。


「じゃあ、これとこれならどっちがいいと思う?」


目の前に並んでいるのは、白地に淡い色の花柄模様で膝丈まであるスカート。そして、無地の黒いミディアムスカート。

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