あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。

「でもさ、もし、自分が良いなって思ってた方じゃないのを俺が選んだら? やっぱり聞かなきゃ良かったって思わない?」


どちらが良いかを他人に問う時。その時、かなりの確率で本人はどちらが良いかが自分の中で決まっている。

自分はAが良いと思っていたのに、相手がBの方が良いと答えた場合、質問をした本人は、質問をしたことを後悔するだろう。

誰にでもある経験だとは思うけれど、質問をした本人が求めるのは、結局のところ自分が思うものと同じものを選んでもらうこと。そうして背中を押して欲しいだけなのだ。

つまり、俺が言いたいのは、ハルがどちらが良いと思っているのか分からなかったから、どちらも似合うと答えた。これが何故正解ではないのかということ。

それに、本当にハルにはどちらも似合うと思う。本当のことを言ったまでだ。


「もう、本当に分かってないんだから」


ハルが大きく溜息をついた。

分かっているつもりが、全然分かっていなかったらしい。……女心って難しい。

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