あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
……俺には、彼女がいる。
このメッセージの送信者である友人が差しているのは、彼女であるハルのこと。
まぁ、彼女ももはや〝元カノ〟になりつつあるけれど……。
俺とハルは、ちょうど一年前に出会って付き合い始めた。本当なら、今日は一年記念日。……だけど、彼女は横にはいない。
ちゃんと正式に別れたとかそういうわけではない。これが終わった恋だとするならば、終わり方は限りなく自然消滅に近い。
「はぁ」
大きく溜息をついた。それと同時に顔の前で広がった白い息。それを見て余計に寒さを感じた俺はスマートフォンと手をもう一度ポケットに突っ込んだ。
ふと、空を見上げる。
白い雪がふわふわと舞う空に思い浮かべたのは、彼女の笑顔と、悲しそうな顔。……それから、最後に聞いた言葉。
彼女と最後に会ったのは二週間と少し前だったと思う。
大学帰りにいつものように待ち合わせて帰っていた時だったな。
その時、ハルは『駅前の大きなクリスマスツリー見に行きたい』って何度も何度も言って、俺を困らせてきたなぁ……。