あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
「……俺に買えと?」
「うん!」
「嘘でしょ……」
「嘘じゃないよー、だって私お金持ってないもん」
「はぁ⁉︎ お金持ってないの?」
「うん!持ってない」
自慢気に頷いたハルは、本当にどこまでも自由なやつだなと思う。……まぁ、いいんだけど。
「分かったよ。買ってくる」
「やったー!」
両手を挙げて喜んでいるハルを背に、俺はカウンターに向かった。
「ありがとうございます」
一人で店を回しているのであろう女性スタッフにスカートを渡すと、スタッフは綺麗にそのスカートをたたみ始めた。
「プレゼント用にされますか?」
「あ、いいえ。あそこにいる人にそのまま渡すので大丈夫です」
「え?」
一度だけハルの方を見てから、カウンターに顔を戻す。すると、女性スタッフが首を傾げていた。
「え? あ、あれ……どこ行ったんだろう」
もう一度、振り返ってハルを探す。だけど、ハルはいない。
さっきまで服を見ていたはずなのに……