あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
ん? あれ? ちょっと待って。
「……もしかして」
気づけば、俺は走り出していた。
幸せそうに行き交うカップルをうまく避けながら走った。
『12月24日、午後5時。駅前の大きなクリスマスツリーの前』
もしかして、あの言葉はハルからの待ち合わせの言葉ではないかと思った。
きっと、そこに行けば彼女ともう一度会える。そう思ったのだ。
だから俺は、走って、走って、走り続けた。
走りながら、右手でスマートフォンをポケットから取り出す。そして、時刻を確認した。
今の時刻は、午後4時55分。
……よし。あと少しだ。全然間に合う。
そう思いながらスマートフォンをしまおうとした時。
───ドンッ!
誰かにぶつかったのか、俺の身体中にはジーンとした痛みが走った。そして、勢いよく地面に倒れこんだ。