あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
コップをテーブルへ置いた時、店内中央にあるカウンターからスタッフがグラスを二つ手にやってくるのが目に入った。
「あ、私のカルーアミルクだ」
どうやら、ハルにもそのスタッフの様子は見えていたらしい。
「お待たせいたしました。カルーアミルクと、グレープサワーでございます」
「ありがとうございます」
やって来たスタッフによって、テーブルの上に二つのグラスが順に置かれた。
「失礼いたします」
「あ、はい」
テーブルの上に置かれた二つのグラスは、どちらも俺の目の前に置かれている。
真ん中とか、ちょっと俺の方に寄っているとか、そんなのじゃなくて……本当に、俺の真ん前に置かれている。
この光景に、俺は少し戸惑った。
────あれ。なんだ、この違和感。
「はい!もーらった!敦くん、乾杯しよう!」
「あ……うん。そうだね」
突然大きな声を出して、俺の目の前に置かれていたカルーアミルクをとったハル。