あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。

コップをテーブルへ置いた時、店内中央にあるカウンターからスタッフがグラスを二つ手にやってくるのが目に入った。


「あ、私のカルーアミルクだ」


どうやら、ハルにもそのスタッフの様子は見えていたらしい。


「お待たせいたしました。カルーアミルクと、グレープサワーでございます」

「ありがとうございます」


やって来たスタッフによって、テーブルの上に二つのグラスが順に置かれた。


「失礼いたします」

「あ、はい」


テーブルの上に置かれた二つのグラスは、どちらも俺の目の前に置かれている。

真ん中とか、ちょっと俺の方に寄っているとか、そんなのじゃなくて……本当に、俺の真ん前に置かれている。

この光景に、俺は少し戸惑った。



────あれ。なんだ、この違和感。



「はい!もーらった!敦くん、乾杯しよう!」

「あ……うん。そうだね」


突然大きな声を出して、俺の目の前に置かれていたカルーアミルクをとったハル。

< 41 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop