あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
モヤモヤとするような違和感を抱えたままでハルの持つグラスと自分のグレープサワーのグラスを軽く当てた。
「……ねえ、ハル」
ごくごく、と音が聞こえてきそうな程に勢いよくグラスを傾けてお酒を飲むハルに問いかける。
ここまで、何となくだけど隅っこに感じていた違和感。
それはただの違和感なんかじゃないのではないか。今は、そう思えて仕方がない。
「んー? なに?」
「ハルは……本当に、生きてるの?」
ハルの瞳が一瞬、揺れた。
「ええ? どうして? 敦くん、また幽霊だとか言わないでよね」
あはは、本当あれは面白かったな。
そう言ってまたグラスを持ち上げたハルの様子が、珍しく焦っている様な気がした。
……何か隠してるな。そう感じた。
「真面目に聞いてるんだけど。だって、さっきからおかしいんだよ。行くところ行くところで変な視線浴びるし、さっきのスタッフさんだって、お酒持ってきた時、ハルとだけ目を合わせてなかった。俺の方しか見てなかったよ。………まるで、ハルだけが存在してないみたいだった」