あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
もう、本当にさよならだね
「………ここ、座って」
「うん」
居酒屋を出て、数時間前にいたクリスマスツリーの前へと戻ってきた俺とハル。
クリスマスツリーの前にあるベンチが空いていて、そこに座って話すことになった。
俺はハルに支持された通りベンチへと腰掛けて、その隣にハルも腰掛けた。
「話す前に……最後に、ひとつだけしてみたい事があるんだけど……いい?」
「……うん。いいよ。言って」
ハルの『最後に』という言葉に、この時間にも終わりが近づいているのかと不安や焦りが出てきた。
ハルは……また、俺を置いて消えてしまうのだろうか。
「マフラー、一緒につけよう?」
ハルが、今まで自分の首に巻いていたモコモコの白いマフラーを取ると、持ち上げて見せてくる。
まさか、これを一緒に巻くというのか。一本のマフラーを男女が一緒に巻くなんて、どっかの映画でしか見たことがないのに。
「はっ…⁉︎ そんな恥ずかしい事……」
「はは、大丈夫だよ。さっき言ってた通り、他の人に私の姿は見えてないから」
悲しそうに笑ったハルが、俺とハルの首にモコモコとした白いマフラーを巻いた。