あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
「……うわ。恥ずかしい」
「えへへ、そう? 私は恥ずかしいよりも、嬉しいなぁ」
ハルが周りの人には見えていないとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。
だって、現にハルは俺の横にいるんだから。俺には、見えるんだから。
でも、ハルがあまりに嬉しそうに笑うから、恥ずかしさなんて耐えてやろうかと思えた。
「……まあ、いいよ。こんな事、あの時には出来なかったしね」
「敦くん……ありがとう」
少しだけ顔を俯かせたハルが、しばらくしてから顔を上げる。
そして、真っ直ぐ前にあるクリスマスツリーを見たままで口を開いた。
「……さっき、敦くんが言った通りだよ。私は、この世界には存在していない。四年前の交通事故で居なくなってるから。……だけど、ちゃんとやり残したこととか、後悔をなくすために出てきたの」
「やり残したこととか、後悔……?」
「うん。そう。私には、まだまだやりたい事があった。それから、実際に消えてしまってから出来た後悔もあった。あぁ。あれやっておけば良かったなぁー、とか。あれを伝えておけば良かった、とか」