あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。

ハルの身体が、足先だけでなく膝辺りまで透けてきた。

ただただ驚いて、どうすることもできない俺にハルが笑いかける。

懐かしくて、儚い。もしかしたら、最後になってしまうかもしれないこの笑顔を、俺は目に焼き付けようとした。


「敦くん、言ってたよね。今の彼女さんに私を重ねてるって。……でもね、それは間違いだよ。むしろ、逆だった」

「逆……?」

「よく思い返してみて。私といる間に何度か彼女さんを思い出したんじゃない? 敦くんは、私に彼女さんを重ねて見てた。それから、ミルクティーしか飲めないのは? 彼女さんでしょう?」


あれは少しショックだったな、と言って笑うハルに俺は気づかされた。

確かに、ハルといる間に俺は何度となく彼女であるハルのことを思い出していた。

ミルクティーの事だってそうだ。「ミルクティーじゃないと飲めないんだもん!」なんて言っていつも駄々をこねていたのは、あのハルだ。


「最初こそ私と似ていると思って、彼女を利用してしまうような形で付き合ったのかもしれない。でも、次第に彼女自身を好きになっていたんじゃない? 彼女は私じゃないよ。〝古賀晴(こが はる)〟じゃないんだから。」

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