あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
真っ暗な世界に聞こえてくるのは、彼女の透き通った声と、雪の音だけ。
瞼に伝わる彼女の指の感触が、どんどん無くなっていく。
「私のことは、小さく、小さく……頭の片隅に置いておいてくれたら、それだけでいいの。それだけで、十分幸せだから。だから……」
だから、お願いします。
ハルの声が、段々と遠くなっていく。
ああ、消えてしまう。
また、彼女に伝えられないまま終わってしまうのか?
……いや。絶対にそんなの駄目だ。
────俺は、ちゃんと彼女に恋をしていた事を伝えるんだ。
そして
「晴……‼︎ありがとう!本当に、本当に……大好きだった……‼︎」
懐かしく、愛おしい、この気持ちとはサヨナラをするんだ────。