あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
「愛してる」
「……あれ」
ひどく重たい瞼を開ける。
どこかに仰向けに寝転んでいるらしい俺の視線の先には真っ白い天井。周りを見渡してみると……うたた寝をしている愛しい人がいた。
「ん……あ、寝ちゃうとこだった……って、ふぇっ……⁉︎ あ、あ……あっくん……⁉︎ せ、先生に伝えないと…!」
白ばかりで統一された部屋に、微妙に香る薬品の匂い。どうやらここは病院らしい、とすぐに分かった。
だけど、何故か無性に愛おしくて俺は彼女を抱き寄せた。
「あ、あっくん……? ねえ、どうしたの? ここ病院だよ?」
「うん。知ってる。でも、それでも、こうしてたい。……ダメ?」
「そ……そんなの……ダメじゃないに決まってるじゃん……!でも、恥ずかしいんだもん!」
腕の中で、頬を真っ赤に染めている彼女。
「……春(ハル)」
久しぶりの匂いに、久しぶりの声。久しぶりの肌。どれもが愛おしくて、思わず名前を呼んだ。