あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
俺は、それ以来彼女とは永遠に会えなくなってしまった。素直になれなかったことや、伝えたいのに伝えられないことがあったことを、とても後悔していた。
だけど、その彼女が今目の前にいる。
「まぁまぁ。そんな事より、外は寒いしあの中に入らない?」
「え、ちょっ……」
混乱している俺をよそに、まるで、普通に生きているかのように話を進めたハル。
そんなハルに手を引かれ、半ば無理やり駅に直結した建物の一階にあるカフェへと連れて行かれた。
「私は座って待ってるから、注文してきてね」
「えっ」
「お願い!私、ストレートティーね!」
「ちょ、ハル……!」
ハルは右手をひらひらと振りながら、窓際の二人席に腰掛けた。
……まったく、自由だなぁ。
彼女の自由さにある意味で関心しながら、彼女の背中を眺めていた。
「あの……お客様、ご注文は?」
「あっ、すみません。ホットストレートティーと、ブラックコーヒーで」
どうやらレジの真ん前に立っていたらしく、カウンターの向こう側の店員さんが遠慮がちに俺の顔を覗いてきた。
ハッとした俺は、頼まれたストレートティーとブラックコーヒーを頼み、財布を開ける。