あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
「お二つですか?」
「え? あ、はい」
「お持ち帰りでしょうか?」
「いえ。飲んで帰ります」
「あ、はい。かしこまりました。では、こちらの方に少しずれてお待ちくださいませ」
黒いエプロンをかけた女性スタッフさんにそう言われた俺は、言われた通り右側にずれて待った。
しばらくすると、他の男性スタッフが二つのカップを手にやって来る。
「お待たせいたしました。ホットのストレートティーと、ブラックコーヒーでございます」
「あ、ありがとうございます」
二つのカップを受け取った俺は、慎重に彼女のいる席へと向かった。
「あー、やったあ。ありがとう」
「うん。いいよ」
彼女にストレートティーの入ったカップを手渡すと、くいっと口角を上げて喜んだ。
うわあ……ハルがいる。この世界の、この街に。しかも、俺の目の前に。
存在するはずのない彼女がここにいるというのは、本当に不思議で信じられない。
未だに混乱中の俺の頭は、まだ追っ付きそうにない。