婚約者は高校生
だったら協力してやろう。
…なんて思うとでも?
俺はまだ肝心なところを聞いていない。
「なぜ期間限定なんだ?」
彼女はカチャリ、とカップを置くとまっすぐに俺を見た。
その瞳には何かを決意している意思の強さが表れている。
「…家を出るまでの間、私の身の安全を守るためです」
その言葉に俺の頭に疑問符が浮かぶ。
事故や事件を避けるためであるなら車で移動すればいいし、なんならボディーガードを雇えばいいはずだ。
四六時中一緒にいられるわけでもない上、会社員である俺に物理的に彼女を守れるとは到底思えない。
…となれば、やはり誰かに言い寄られて困っているというわけか。
しかも「家を出るまで」と言っているということは家の中、または身近にその相手がいるということになる。
「俺が婚約者になるだけでそれが守られるというのか?」
「はい。多賀さんは立場がある方ですし、多賀さんとの仲を壊すことはデメリットになります。ですので、まず手出しはしてこないはずです」
「なるほどな。話は理解した」
そう言うと、彼女は期待に満ちた眼差しを俺に向けてくる。