婚約者は高校生
理想との出会い
それからしばらく俺は忙しく過ごし、その間彼女からの連絡はいっさい来なかった。
あの日から一週間ほどが経とうとしていたある日、俺はお祖父様に再び呼び出された。
「どうだ、最近は」
「猫の手も借りたいほど忙しいですよ。それより、何の用でしょうか」
「そう急くこともないだろう。少しはゆとりを持たんといかんぞ。これでも見て和んではどうだ」
お祖父様が手で示したのは花だ。
しかも重厚感あふれるこの部屋に似つかわしくないくらいの花。
小さめのかごに入った日もちする花束…俗にいうフラワーアレンジメントっていうやつだろう。
和むというよりはなぜここにあるのか気になるところだが…。
ここにある理由として考えられるのは、お祖父様が顔に似合わず花を愛でる趣味があるためだろう。
「綺麗な花ですね」
淡々と言うと、「お前には情緒というものがないのか」とため息まじりにお祖父様はぼやいた。
どうやら他の感想が聞きたかったらしい。
でも俺にとっての花は女性を喜ばせるためのひとつのツールなのだ。
綺麗であることは大事だと思うんだが…。
首をかしげていると、「今に始まったことではないな」とお祖父様はひとりで納得したようにうなづき、こちらを見た。