婚約者は高校生
カワイイ子にそう言われたらなびかない男はいないだろう。
だけど俺には特に魅力的に映らないんだよな。
それよりもさっさと用を終わらせて帰りたい。
「ね、行こう?」
派手な子はそう言いながらさりげなく俺の腕にさわり、上目遣いでこちらをのぞきこんでくる。
…慣れてるな。
こういうタイプはやんわり断っても引かないだろう。
…はぁ、仕方ない。
俺は気持ちを切り替えるように一度目を閉じてから派手な子に向き直る。
そしてあごを軽く上向かせてその目をじっと見つめると、派手な子の頬が次第に上気し始める。
相手を見つめるときは少しばかり熱っぽくするのがポイントだ。
俺から視線を外せなくなったところで、俺は口の端を上げてクスリと意地悪な笑みをこぼす。
「魅力的なお誘いだけど…一応用があって来ているからね。応えられなくて悪いね」
わずかに色気を声にのせて言うと相手の子は顔を赤くして、よろめきそうになりながら「はい…」と小さく呟いて俺から離れた。