婚約者は高校生
しばらく走り、広い公園の近くまで来ると俺を引っ張ってきた手は離された。
息を整えながら俺に向き直る理想の脚……の持ち主。
視線を脚から上げて目に映ったのは地味…というか、よく言えば真面目な格好をした女の子だった。
制服をきっちり着て、スカートは膝丈。
少し長めの黒髪をふたつ分けにしてくくっていて眼鏡をかけている。
先ほど見た派手な子とは対称的な、学校内のお手本ともいえそうな子がそこにいた。
ええと?
誰だ、この子は。
さっき「私を探してたんでしょう」と言っていたけど、俺が探していたのは明らかにこの子ではない。
「多賀さん、私に何か用事だったんですか?」
「いや、探していたのは君じゃなくて瀬野尾姫紀さんなんだけど…」
「ああ、すみません。この姿じゃわかりにくいですよね」
彼女はそう言うとメガネを外して髪をほどいた。
化粧をしていないものの、彼女は俺の見合い相手、瀬野尾姫紀その人だった。