婚約者は高校生
試用期間
2週間。
たったそれだけで俺のことを知るのは難しいだろう。
俺との接点もない上、学校もある彼女が短期間で俺のことなどわかるはずがない。
だから2週間の間、時間を作ってできるだけ俺の方から会ってやろうと思っていたのに。
あの日から2日。
会社の俺のデスクの前に人事部の人と一緒に立つ姿に俺は一瞬目を疑った。
そこにいたのは眼鏡をかけた女の子。
男ウケを狙ってか緩くふんわりと結ぶ女子社員とは対照的に黒髪をきっちりとひとつに結び、ボウタイブラウスに膝丈のスカートといったシンプルな格好をしている。
良く言えば真面目、悪く言えば地味。
普通であれば目にもとまらないが、最近見た覚えのある格好。さらにその脚から瀬野尾姫紀だということがわかった。
なんで彼女がここに?
いや、それよりも話をまず聞かないといけないか。
真っ先に頭の中に浮かんだ疑問を押し込めてとりあえず人事の方を見る。
「多賀部長、彼女はアルバイトの坂下さんです」
紹介を受けて、彼女はペコリと頭を下げる。
坂下さん?
その脚はどう見ても瀬野尾姫紀さんだろう。
…そんなことよりも、だ。