婚約者は高校生
……と、思っていたのだが。
終業時間が過ぎてからしばらくして携帯が軽快な音を鳴らして着信を告げた。
誰だよ。
今、残業中だっていうのに電話をかけてくるのは。
画面を見ると「会長」と表示されていたため、仕方なく俺は席を立ち、カフェスペースに向かって歩き出した。
「はい、多賀です」
「おお、亮介。仕事はもう終わったか?」
歩きながら電話をとると、どっしりと威厳ある声が耳元に響く。
「…まだしなきゃならないことがあるんで残業中ですよ。何かご用ですか」
「亮介、明日は休みだろう」
はぁ、とこれみよがしにため息をついてみたものの、お祖父様はまったく気にした様子もなく言葉を続けた。
「………そうですが、何か?」
「水族館のチケットがあるんだが…」
…………。
まさかのお祖父様からデートのお誘いとは。
しかも水族館。