婚約者は高校生
お祖父さんと孫で水族館に行く、というのは別に変なことではない。
それが、小さな子供であればの話だが。
「そういうのは私ではなく、女性の方と行ってください。では」
カフェスペースに足を踏み入れたところで電話を切ろうとすると「待て」と止められた。
「姫紀さんとおつきあいしているのだろう?社内でたいそう噂になっているそうじゃないか」
「…よくご存じですね」
「だから、休みなら姫紀さんを誘って水族館に行きなさい」
………。
なんでそうなる。
そもそもなんでそんなお膳立てをされなきゃならない。
というか、デートくらい自分で誘いますから!!
それに、俺には昼まで寝るという予定がありますから!!
…というわけで、ここはうまく断ってしまおう。
「あ、あのですね、お祖父様。そうは言いますが先方の都合ってものがあるでしょう」
いつものごとく、不機嫌さを露にして文句を言えたらいいのだが、ここは誰に見られるかわからない社内。
作り上げてきた外面を保つためになんとか笑顔を維持しているものの、口元がひきつり声が震える。