魅惑な彼の策略にはまりました
「リリはさ、それでもいいよね。アロンっていうグッドパートナーがいて、仕事も恋も輝いてる」


リリは死産と離婚を経て、アメリカに渡り、そこでアロンという恋人と出会った。
もう何年もふたりは事実婚のような状態で暮らしている。

私の溜息まじりの言葉に、宗十郎が意地悪く反応する。


「ひがみか?」


「ひがみかも。若い頃、苦しいことがあっても、今安定した幸せがあるんだもん。だから、リリは余裕があるんだよね。あーいう達観した意見を言えるっていうのはさ」

リリを傷つけたと思いながら、彼女の幸せを妬む私がいる。
あー、醜い。醜いから、私はひとりぼっちなのよ、きっと。


「リリは努力してっからな」


「私はしてないんかーい」


ムッとして、横の宗十郎に右拳でパンチ。

上背のある宗十郎は左手で受け止め、ぽいっと私の手を捨てた。
つんのめる私は鈍くさい酔っ払いだ。


「方向性違うんじゃない?ガキどもの飲み会に出たり、出会ったばっかの男と寝たり」


ぐうの音も出ない。
その通りですよ。きみの言うことは間違っていない。
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