魅惑な彼の策略にはまりました
「宗十郎はさ、モテるし、焦る必要もないし、ひとりでも生きて行けるし。いわゆる恋愛をファッションとして考えるオサレ男子っつうカテゴリで……」


「そういう古典的な考え方が、ババくさいんだよ」


「ババアだもん、もう」


あーあ、なんでだろ。男は年を経ればビンテージ的に価値が上がり、女はいきなり株が暴落する。


「34歳で枯れるなって。俺より二個上なだけだろ。俺が言いたいのは、そのひとつの方向だけで見て話をまとめるのが悪いクセだってこと。他人と親密にやりとりしてないから、柔軟に考えるの忘れてんだよ、おまえは。そんなんじゃ、本当に新しい相手、できないぞ」


「……説教、嫌い」


酔っ払いの年上女が面倒になったのか、宗十郎はしばし黙った。

こいつはクールで意地悪な野郎なので、こんな時、的確で優しい慰めの言葉なんか用意してくれない。
黙ってこっちが落ち着くまで無視か、『俺、帰るわ』のどっちかだ。

しかし、今日の宗十郎は違った。


「まあ、さっきも言ったけど、恋愛に対する努力を怠っているって点は四季を責めらんない」


宗十郎はニットキャップで耳を隠し、ほおっと白い息をはいた。
高い鼻梁が目立つ。綺麗な横顔だ。


「俺が付き合おうか?」
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