魅惑な彼の策略にはまりました
「俺、四季のことは大事な友達だと思ってる。世代も一緒だし、飲んでて楽しい。話も合う。だから、俺なら、四季のピンチを救ってやれる。哀れな被害妄想思考を変えてやれる。俺に恋して見ろよ。ごっこ遊びみたいなもんでいいからさ」


中性的でクールな表情は一切変化がない。
からかっているわけじゃないのは、付き合いも長いしわかる。


「そういう無用の気遣い、勘弁して」


私は肩を竦めて、一歩前に出る。


「可愛くないね、四季」


「可愛かったら、今頃とっくに結婚してるわよ」


「ホント、性格が可愛くない。男が嫁に求める条件って、結局可愛い性格なんだよな」


オマエ、ケッコンムリ。そう言いたいなら、はっきり言わんかい。
ぎりっと歯噛みをする。

すると、私の背後から腕が伸びた。
あ、と思う間にその腕は私に巻き付いた。

背中に感じる温かな体温と、髪に重なる吐息。

確認しなくてもわかる。抱きしめられているのだ。
目の前にあるのは宗十郎のパーカーの袖だもん。

こいつ私に馬鹿にされてムキになってるな。ため息をひとつついて、言う。


「あすなろ抱きとか……やっぱ古」
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