魅惑な彼の策略にはまりました
「親友じゃなくて、飲み友達。あいつがニューヨークに行く前の超無名時代から結構仕事で一緒してんの」


「いいなぁ~!あんなイケメン有名人と特別な関係だなんて!」


特別な関係っていうのは、馴染みの居酒屋でしょぼい愚痴を聞かせる相手だろうか。

ちなみに育江が宗十郎の大ファンであるため、私は飲み会をセッティングしたこともある。
しかし、育江は『憧れの人は遠くでキャーキャー言ってたいんです!』と言い張り、参加を頑なに拒否したのだった。

女心は複雑だ。
でも、今にしてみれば、よかったかもしれない。可愛い部下が、宗十郎の毒牙にかからなかったんだから。


私は本部に提出する資料をまとめつつ、ため息をついた。


一昨日の晩のことは、こうした瞬間ふと頭を過る。

どういうつもりなんだろう、宗十郎は。
酔って愚痴って、リリに怒られた私にあいつが言った言葉。


『俺が四季の恋を指南してやるよ』


何言ってんのかしら、あのバカ。
それは、俺が相手やシチュエーションをお膳立てして、プロデュースするぞ、ってこと?

うーん、違うっぽいのよね。
額面通り『宗十郎自身が恋人ごっこの相手をする』っていう意味にとれるんだけど。
< 30 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop