魅惑な彼の策略にはまりました
あーあと深いため息が出そう。
プライドはずたずただし、腹も立つけど、怒ったり泣いたりする気力がない。

ただ漠然と思う。あーあ。

普段飲むメンバーとは違う若い子たちの空気を味わいたいなんて思って参加した。
大人の女の魅力で若い子をたぶらかしたかったわけじゃない。(ちょっとだけ、モテるかも!なんて思わなかったわけじゃないけど!)

心底思う。
来るんじゃなかった。

ガキどもに馬鹿にされる自分、あーあだわよ、まったく。

なので、私は席になんか戻らないのよ。静かにバックレるの。
憎いガキどもに社会的制裁を加えることは、何人かには可能だと思う。
あいつらの上司に知り合いだっている。でもそんなことはしないの。

幸いバッグは手元だし、コートはあとで石田に回収させるとして、タクシーを捕まえて暖房マックスで目黒の自宅マンションまで帰るのよ。
それで今日は終わり。


「帰っちゃうんですか?」


座敷の前で固まっていた私に声がかけられる。
横を見ると、スーツ姿の優しそうな男性がいる。
30代半ば、同い年か少し上に見える。少年のように無邪気な雰囲気のある人だ。
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