魅惑な彼の策略にはまりました
「ここでうちの後輩たちが飲み会してるって。僕、遅くなっちゃったので入りヅライんですよね」


ああ、そういえば、石田は『先輩と同世代のメンズも来ます!』なんて言っていた。この人かあ。


「あなたですよね。今日の飲み会に参加の僕と同世代のヒトって」


この人も同じ説明を受けていたみたい。私はコクリと頷く。


「中根(なかね)と言います」


彼が頭を下げるので、私も下げた。


「高原です。高原四季(しき)と言います」


「シーズンの四季ですか?素敵な名前だなぁ」


初対面でこの名前を褒める男はたいていロクなヤツじゃない。
これ、私統計。

でもこの人、やっさしい目で私を見てるなぁ。
あ、そっか、後輩連中の私の悪口が聞こえちゃったのね。同情してんのね。


「早速ですが、高原さん、僕とこんな会を抜け出しましょう」


中根さん……彼はそう言って私の右手首をつかんだ。

少しだけ、胸が高鳴った。それは、そういうお誘いと取っていいのかしら。

迷ったのは一瞬。今はこの新たな可能性の方に飛びつきたい。
私は頷き、彼に手を引かれるままついて行った。

なんだ、嫌なことの後にはいいこともある。
高原四季34歳、久々に手ごたえのある出会いの予感。




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