魅惑な彼の策略にはまりました
脱力感はわかなかった。

うん、さっきのセックスでなんとなくわかってた。
たぶん、本命として扱ってないなーって。性欲処理要員だなーって。

裸で安いごわごわシーツに転がっていることが、途端に嫌になった。
立ち上がり、バッグから財布を出す。
1万円。ご休憩なら、これで足りるでしょ。

シャワーが使えないのが嫌だけど、このまま服を着る。
若造たちに笑い倒されたオフショルワンピに虚しくも袖を通す。高かったし、大事に着てたけど、もう二度と着ない。

これも相応じゃないんだろうななんて思いながら、レザーのロングブーツをはくとシャワールームのドアが開いた。


「あれ?高原さん、もう帰るの?」


妻帯者・中根が言う。


「ええ。あ、奥様からショートメール着てたみたいよ」


見えちゃったんだから、仕方ないよねぇという悪びれない笑顔で言う私。

すると、この浮気男がけろっと言うのだ。


「そっか、ありがと。高原さん、また遊ぼうね」


……あんたさぁ、手軽に遊べる女の年齢を間違えてるよ。

私は物も言わず、安いペンキ塗りのドアを開けた。
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