魅惑な彼の策略にはまりました
宗十郎は、私をドキドキさせるのがうまかった。女性一般の扱いがうまいせいだろうけど。
付き合いが長いから話もツーカーで、楽しい。

初対面の男性と気を遣い合った会話をしながら、ここにいるのが宗十郎なら楽しいのに、なんて考えてしまう。
結局、宗十郎のことを気にして誰かと恋愛するモードになれないなら、婚活なんて無意味だ。
相手にも失礼だ。


当の宗十郎とはあの夜麻布で別れて以来、会っていない。

宗十郎は“招き猫”に姿を見せなくなり、リリが、誘っても「忙しい」の一点張り。

たぶん私と離れたいのだと思う。
妙にこじれた私との関係を清算するため、会わないようにしているんだと思う。


このまま離れてしまうのかな。
それが正解かもしれない。

だって、あのまま宗十郎のペースで恋愛ごっこを仕掛けられ続けたら、本気になってしまう。
宗十郎はふざけて、「付き合おう」なんて言えても、私が本気になったら処遇に困る決まってる。

今ならまだいい。
傷が浅いうちに離れればいい。

10年来の友情が無くなってしまうことを惜しむだけで済む。
どうしようもなく苦しい胸の内なんて、誰にも見せなければ痛くない。



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