クレーマー
その出来事が一体何なのか、少しだけ気になったけれどあたしには関係ない事だと思い直した。


そもそも明彦の悪口を言ったのは北乃リナではない気がする。


あたしはミカンに返事も書かず、メールを閉じた。


そして、今度はいつものサイトに接続した。


掲示板にザッと目を通すと、今日はまだ人が少ない事がわかる。


今書き込んでも面白い返事はもらえないかもしれない。


そう思いながらも、あたしはスレッドを表示させた。


今まで自分が書いて来た色んな悪口がズラッと並んでいる。


それを読み返していくと、自然と口元が緩んでいくのがわかった。


自分が嫌だと感じたことはすべてここに吐き出している。


実際に起きた出来事よりも過激に脚色し、可愛そうなクレーマーを演じている。


そんなあたしに群がって来る好奇心むき出しのハイエナたちも、見ていてとても面白かった。


《クレーマー;この前彼氏と別れちゃった。


あたしは彼氏と2人でどんどん上を目指していきたかったのに、彼にはその気持ちがなくてすれ違っちゃったみたい。


本当に辛くて夜も眠れなくて。だけど彼氏の方は他に好きな人ができたみたいで、もう戻れなくなっちゃったよ……》


あたしはそう書き込み、返事を待った。


恋人の話題になるとみんなの興味は一気に膨れ上がり、返信もいつもの倍くらいはくるんだ。
< 110 / 187 >

この作品をシェア

pagetop