クレーマー
手にはすでにコロッケ1個分のお金が握られていて、早く帰ってもらいたそうにしている。


あたしは男性からお金を奪うようにして受け取り、そしてレジをしている彼女前で立ちどまった。


「いらっしゃ……」


言いかけた言葉を飲み込む。


あたしの怒った顔を見て視線を泳がせている。


「さっき、コロッケ1つ買ったんだけど、2つ分のお金取られてるんだけど!」


あたしはわざと大きな声でそう言った。


「す、すみませんでした!」


敬語も忘れて、彼女は頭を下げる。


「なに、その言葉使いは! 申し訳ございませんって言うのが常識じゃないの!?」


あたしはそう怒鳴り、レジカウンターを手の平で叩いた。


バンッ! と大きな音が店内に鳴り響き、一瞬シンとするのがわかる。


冷たい空気が流れる中、あたしは更に声を上げた。


「このコンビニの教育はどうなってるの? 人から金を巻きげるような子を雇って、信じられない!!」


あたしの言葉に、お客さんたちの視線が彼女へ向けられる。


今にも泣きだしてしまいそうだ。


「お客様、お話は奥で聞きますから……」


慌てて仲裁に来た本部の人間を振りほどき、あたしは大股で店を出たのだった。
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