クレーマー
☆☆☆

山内マキナの家は徒歩で5分ほどの場所にあるアパートの一室で、こんなにも近くなのかとあたしは目を丸くした。


念のため持ってきた帽子を深くかぶり、チャイムを押す。


ここまで近所だと、すぐにあたしだとバレてしまいそうだ。


しばらく待っていると足音が聞こえてきて玄関のドアがあいた。


開いた瞬間、下着のベビードール姿の女の子が現れてあたしは一瞬息を飲んだ。


白くて柔らかそうな肌に、ピンク色のセクシーな下着。


髪の毛もピンク色に染めていて、写真で見た時よりもかなり派手だ。


玄関には男物の運動靴が乱雑に脱がれているのも見えた。


「誰、あんた」


山内マキナは怪訝そうな顔であたしを見る。


あたしはスッと息を吸い込んだ。


この子の見た目に騙されて怖気づいちゃダメだ。


「マキナ。あんた人の彼氏取ったでしょ」


あたしは山内マキナを睨み付けながらそう言った。


マキナは目を丸くし「はぁ?」と、首を傾げる。


「とぼけたって無駄なんだよ! リナが全部喋ったんだからね!」


そう怒鳴ると、マキナの顔は見る見る内に青ざめて言った。


「リナが? だってあいつ学校休んでんじゃん!」


「昨日家まで言って問い詰めたんだ。あたしの男を取ったのは誰かって!!」


「ちょ、ちょっと待ってよ! 別に取るつもりなんかなかったし、そもそもアイツに彼女いるとか知らなかったし」


マキナは焦りはじめ、部屋の中にいる男の存在を気にし始めた。
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