クレーマー
けれどこの男もさっきの女も、あたしへ向けて怒っている事が感じられた。


「お前は最低な人間だ」


男がくぐもった声でそう言った。


すると、その後ろから同じように真っ白な仮面をかぶった大勢の人たちが現れ、あたしを覗きこんできたのだ。


その光景にゾクリと背中が寒くなる。


今すぐ逃げ出したいのに、体は全く動いてくれない。


「人として失格よね。ポンコツだわ」


「本当。こんな役立たず、俺初めて見た」


「この子、自分を何様だと思ってるのかしら」


色んな声が聞こえてきて、クスクスと笑い声がこだまする。


頭に血が上り、怒りがこみあげて来るのがわかる。


お前ら一体誰なんだよ!


そんな仮面かぶって言いたい放題いいやがって!!


そう怒鳴りたいのに、喉の奥から出てきた言葉は……「申し訳ございませんでした」。


自分の言葉にあたしは目を見開いた。


違う。


こんな言葉が言いたいんじゃない。
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