クレーマー
「どうして出て来ないのよ……」


イライラと2階の部屋へ視線を向ける。


分厚いカーテンが引かれていて、中の様子はわからない。


もう一度チャイムを鳴らそうとしたその時だった、後ろからあたしの口を誰かが塞いだ。


咄嗟の事で抵抗もできず、あたしはその人物の抱きかかえられるようにして北乃リナの家へと連れ込まれてしまったのだ。


その相手が誰なのか考える暇もなく、あたしは北乃リナの家のリビングへと連れて来られていた。


外からみるよりも更に大きく見える室内に、20人ほどの男女がいる。


あたしはその中央に投げ出されるようにして開放された。


「なんのつもりよ！！」


床に打ちつけられて痛みを感じながらそう怒鳴る。


「騒いでも無駄だよ。このリビングは防音だから」


穏やかな口調で1人の女が言った。


その顔に見覚えがあったあたしは「あっ……」と、小さく呟いた。


北乃リナ、本人だ。


「なんなのあんたたち、あたしをどうするつもり！？」


わけがわからず、悲鳴に近い声を張り上げる。


20人近くいるというのに、あたしの悲鳴を聞いても誰一人として動こうとはしなかった。


「それよりさ、リナに言いがかりをつけたのってあんた？」


1人の女性が前へ出てきてそう言った。


その顔にも見覚えがあったあたしは、グッと言葉に詰まった。
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