クレーマー
「いい気味だなぁ」


床にこすり付けられているあたしを見て、若い男がそう呟いた。


あたしはその男を睨み付ける。


「あんた誰よ！？」


「あれ？　覚えてないのか？　動物園のソフトクリーム、食べただろ？」


その言葉にハッとする。


この男、あの店員か！


だとしたら、もしかしてここにいる人たち全員が……？


あたしは夢に見た白い仮面の人々を思い出し、ゾッとした。


まさか、本当にこの人たちがあたしに仕返しを……？


でも、なんで？


どうしてあたしだって気が付いたの……？


ドクドクと心臓が高鳴り出した時『名無し』の存在を思い出していた。


「すごく混乱した顔してる」


後ろで誰かがそう言い、それに反応して誰かが笑った。


「仕方ないよね、これだけの人間に嫌われてるなんて思ってもいなかっただろうから」


また、誰かがいい、誰かがその言葉に賛同した。


知らず知らずのうちに、涙が出てきていた。
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