クレーマー
痛みで目の前がチカチカする。


「それだけじゃない。あれだけ好きだった接客業ができなくなって、半年間家から出る事もできなくなってたんだから!!」


1年以上前……あたしがクレーマーになりはじめた頃だ。


確かにあの頃は限度も知らず、相手の人間性をすべて否定してきていた。


仕事を辞めてしまった人がいる事も知っている。


それが、この女……。


「だけど君のクレームの入れ方はいつも単調で同じことの繰り返しだった。


彼女がネットで愚痴を書き込むと同時に、同じ経験をした者たちが集まり始めた。


それはどんどん大きくなり、今や『平仲知世被害者の会』として1つのサイトができているんだよ」


ソフトクリーム屋の男が穏やかな、だけどあたしをバカにしている口調でそう言った。


「自分の名前で検索してみなさいよ」


女があたしにスマホを差し出す。


足で踏まれたままの状態で、あたしはスマホを操作した。


自分の名前を打ち込むと、すぐに何十件ものヒットがあり、目を見開く。


そんな……。


こんな大きな事になっていたなんて……!


知らなかったのはあたし1人。


どんな事が書かれているのか、確認することすら恐ろしくてできなかった。
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