クレーマー
そうなると、あたしの立場はただの悪者となり煙たがられるだけの存在になってしまう。


本気で泣きべそをかいて謝る姿が見れないと、あたしのストレス解消にはならない。


「見て見て、知世! このケーキ可愛い!」


スイーツコーナーで立ちどまり、花梨がヒヨコの姿をしたケーキを指さしてそう言った。


「本当だ、可愛い」


ケーキなんて食べてしまえばすべて同じだ。


そう思うが、言葉を押し込んでほほ笑んだ。


ヒヨコのケーキは確かに可愛いし、手のひらサイズで少し食べるのにはピッタリだ。


「これ、買ってみようかな」


花梨がそのケーキを手に取ると、まるで絵に描いたように似合っていてあたしは思わず笑ってしまった。


「なにがおかしいの?」


不思議そうな顔をして首を傾げる花梨。


「ごめん。花梨とヒヨコが似合いすぎてるから」


そう言うと、花梨は特に気分を悪くした様子もみせず「そう?」と、また首を傾げた。
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