クレーマー
☆☆☆

ショッピングモールを出て花梨を別れたあたしは、1人で家に向かっていた。


あのコンビニの前を通ると、まだ車が沢山停まっているのが見えた。


さすがに三村はもう帰っているだろう。


そう思い、コンビニに足を踏み入れる。


昼と同じように元気のいい店員の声に出迎えられ、カウンターへ視線を向ける。


そこにはまだ慣れていない男性アルバイトが立っていて、レジの打ち方から教えてもらっていた。


あたしはお菓子とジュースを手にしてレジへと向かった。


男性店員はあたしがレジに来ただけで焦った表情を浮かべ、接客用語もままならない様子でレジを打ち始めた。


たった2品だと言うのに手元は震え、うまくレジが通らない。


あたしはその様子をほほ笑んで見つめていた。


今ここで怒りはじめたって、きっと誰も怒らないだろう。


新人と言っても手際が悪すぎるし、客を待たせすぎだ。


だけど今日のあたしは機嫌がよかった。


花梨を見習い、レジ前でジッと我慢して待つ。


時間をかけてようやく袋詰めと会計を終えた店員は冷や汗をぬぐった。


『お待たせいたしました』の一言も言えないのかよ、トロくさい男だな！！


心の中で罵倒しながらも、笑顔で会釈をして店を出た。
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