クレーマー
そう期待した時だった。


1人の男の人が列に並んでいる女性に話しかけながら近づいていくのが見えた。


大きくて筋肉質で、足首からは入れ墨が見え隠れしている。


男性が近づいていくと、自然と列に並んでいた人たちが避けるような形になった。


そして男性はそのまま女性の前に割って入っていったのだ。


あたしは唖然としてその光景を見る。


列に並んでいた人たちも一様に嫌そうな表情を浮かべているが、男性の外見を恐れてしまい誰も注意できずにいる。


あたしはソフトクリーム屋の店員を見た。


細身の男性店員は1人で業務を行っているらしく、割り込みに気が付かない。


あたしは一瞬ベンチから立ち上がりかけて、そのまま腰を下ろした。


明彦の前でなければあの店員を怒鳴り散らしていた所だ。


客の並びくらいちゃんと見て指摘しろ!!


1人しかいないのだからずっと客の行動を見ている事なんてできない。


それがわかっていても、そう言ってクレームをつけたい気分だった。
< 49 / 187 >

この作品をシェア

pagetop