クレーマー
正直、暗い性格の果歩があんなことをしているなんて信じられなかった。


信じられなくて、咄嗟にスマホで写真を撮ってしまったのだ。


後から本当に果歩だったかどうか確認するために。


しかしその時のシャッター音に果歩が気が付いて、こちらを見たのだ。


その顔は青ざめていて必死に言い訳を探しているようだった。


その時、あたしは果歩を自分の言いなりにすることに決めたのだ。


果歩は大人しい性格だから友達もいないし、あたしから受けたストレスも自分でうまく発散することができる。


それ以来、あたしはことあるごとに果歩を屋上へ呼びだしていた。


「き、今日は……なんですか?」


モゴモゴと口ごもるようにそう言う果歩。


その声を聞くだけでイラつきは加速する。


あたしは果歩の頭を平手で叩き、コンクリートの上に正座させた。


その姿に大きな声を上げて笑う。


ほら、人を上から見下ろす事はこんなにも気持ちがいい。


テストで1位を取ればきっともっと気持ちがいいに決まっているんだ。


「別に用事なんてないよ」


あたしがそう言うと果歩は少しだけ晴れやかな顔になった。
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