クレーマー
☆☆☆

その日、課題が出なかったため予習復習をしてひとまず勉強を終えていた。


本当は塾へ通ったりして勉強したいのだけれど、うちの家でそんな贅沢なことはとても言えなかった。


ただでさえ後輩たちに抜かされて行っているお父さん。


しかし、そんな事にも危機感を覚えることなくここまで来ているので、少しでも家計の負担を減らす事を考えないといけない状態だった。


無理を言えばアルバイトをさせられて、その分勉強に身が入らなくなってしまうかもしれない。


それだけは避けたかった。


気分転換にリビングへ降りて行ったとき、ちょうど洋画が終わった所だった。


「あら、帰ってたの?」


あたしの姿を見てお母さんがそう聞いて来る。


「ずっと前にね」


「宿題は?」


「今日はないの。予習も復習も終わったから」


そう言いソファに座ってオヤツに手を伸ばす。


その時ようやくお母さんはテーブルの上のテストに気が付いて「あら、返却されたのね」と、テスト用紙を手に取った。


そして、目を丸くする。


「ちょっと知世、あなたすごいじゃない!!」


全科目90点越えの点数にお母さんは悲鳴に近い声を上げた。
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