わたしの朝
思考迷路
20歳もそこそこだというのに、周りは結婚ラッシュだった。
後輩まで同棲し、赤ちゃんを産んだ友だちまでいた。
結婚・入籍は、今数えられるだけでも11組。
多すぎるほどだ。
焦る自分とへこむ自分と。
それからそれから、彼にはまだ別の幸せがあるんじゃないかと探してしまう自分。
素直じゃない?
いいえ。
どれも私の飾りのない素直な感情。
彼と結婚して、一緒に暮らすようになったら…。
キッチンはこんなの、食器やインテリアはこんな感じで、ベットは広すぎない程度、綺麗めなアパートで、お休みの日はあれをしたりして、たまには恋人だった頃を思い出してあんなこともしたいし…。
そんな、頭に音符がいくつもつくような妄想は、いつも途中で邪魔される。
私といれば、彼に面倒事を増やしてしまうんじゃないか、悲しい顔や困った顔をたくさんさせてしまうんじゃないか、涙をたくさん流させてしまうんじゃないか、足手まといにならないだろうか…。
そんなことを考えてしまう自分だから、彼を笑顔から遠ざけてしまうとも思えた。
全てをゆだねてしまえばいいものを。
どこかでお姉ちゃん役をやりたがる、しっかりしなきゃと思いすぎる、それも私の悪い癖だ。
でも、約束したんだ。
もう離れたりしないって。
行き止まりがあったら、道を作ればいい。
川が目の前をふさいだら、橋をかければいい。
押してダメなら引いてみろ。
扉がどうしても開かない時は、自然に開くのを待ってみよう。
八方塞がりなら、急がば回れ。
それでいい。
それがいい。
そして、仲のいいおじいちゃんとおばあちゃんになって、一緒に花を植える。
そう指切りしたんだ。
まだ死ねない。
死…。
ベットの隅で、小さく震えた。
もし、私があと1ヶ月しか生きられないと断言されれば、私の願いをできるだけ叶えようと必死になってくれるのかななんて、意地悪めいたことを考えてやめた。
私はなんてバカなんだろう。
でもそれくらい、精神は限界に近い状態だった。
もう、寝てしまおう。
私は毎晩の「おやすみ」だけは彼が疲れきって寝落ちしかけても、起こしてせがんだ。
明日の朝、私が目を覚まさなかったとして、彼が後悔の念に駆られないように。
そしてまた私も、最後に聴いた声が彼であるように。
1日の終わりは、きちんと2人で挨拶したかった。
「大好きだよ、愛」
安心して眠りについた。
< 11 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop