わたしの朝
悪夢
私は汚れている。
どれだけ海の波が爽やかに引いても、その事実が消える訳ではなかった。
見知らぬ男に犯され、友だちに犯され、会社の上司に唇を奪われ、兄に犯された。
「お前は汚ないお前は汚ないお前は汚ないお前は汚ないお前は…汚ない…」
「お前なんかが幸せになれると思ってるのか、汚れた奴め…」
「死ね、死ね、クスクス、死んじゃえば、ほんと、死ねばいいのに…」
幻聴が私を縛りつける。
想像妊娠と想像流産を2回。
いまだに、想像だっただなんて信じられないでいる。
妊娠できない身体のくせに。
こんな私だ。
汚れてないという言葉を口にできるほど、私は強くない。
吹っ切れるはずも、忘れられるはずもなかった。
身体中がかゆい。
私はアライグマになったかのように、身体を洗って洗って洗った。
思いっきり、自分を切りつけたくなる。
何かが、私を止める。
「綺麗だよ」
耳を通って、指の先まで届く彼の声。
身体も心も裸の私を彼はまるごと抱きしめる。
身体が少しずつ倒されてゆく。
一瞬、フラッシュバックに頭を抱える。
彼の声、彼の手、彼の首筋、彼のお腹。
全て、彼にしかないもの。
私しか見れない特別な彼。
鮮明に脳を支配しかけた過去の黒歴史がだんだん薄れてゆく。
せっけんとは違うものが、せっけんでは得られない美しさを私に与えてくれている気がした。
温かい。
こうゆうのをヌクモリというのだろう。
ゆっくり、2人で眠りに落ちた。
静かに一筋の涙が頬をつたった。
また1つの夜。
明日も彼に出逢えますように。
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