【眠らない森】短編
ある夜、眠れない夜を持て余していたら一匹の羊が私に話しかけてきたの。


ーーー羊をお数えなさいな


とっても年老いた羊だったわ。


私はその羊に向かって言ったの。


ーーーごめんなさい。私、羊を数えると眠れませんの。


年老いた羊はほんの少し目を細めると


ーーーどうしてだい?


と優しく問うてくれたわ。


ーーー私、羊を数えると数えた後、一体その羊はどこにやればいいのか気になってソワソワしてしまいますの。


これまで誰にも話した事のない理由を打ち明けたの。


ーーーそうだったかい。それは知らなかった。羊が一匹、二匹と数えられたら勝手にそこらで草を食べ始めるさ。


なんて事無いように老いた羊が言ったの。


ーーー駄目よ。夢中で草を食べるうちにまだ数えていない羊とごちゃまぜになってしまって、そしたら私、益々眠れなくなるわ。


そんな恐ろしく退屈な事、寝ずにするなんて馬鹿げた話だわ。


その言葉は心の中で呟いた。


ーーーならば


年老いた羊が言ったの。目をキッと開き充血させた目で私に言ったの。


ーーー数えた羊は殺しておしまいな。


そんな酷い事……


ーーー出来る訳ないわ。


私は答えた。


なんて名案なのと思いながらもそう答えた。






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