【眠らない森】短編
Ⅱ
ーーー赤の森を知ってるかい?
僕は古くからの友人に聞いたその森にいつしか自分が立っている姿を重ねるようになっていた。
まだ見ぬその森に僕は毎夜、立ち続けた。
夢の中での僕は赤の森を自由に歩き続けていた。
赤い土から伸びる赤い木は赤い幹をそこかしこに張り巡らせ、幹を覆い尽くすかのように茂る赤い葉は燃え盛る様に天を隠した。
ーーーまるで炎の中心を歩いているようだ
僕はその赤に恐ろしく心を奪われた。
ある時、僕は見知らぬ老婆に声を掛けられた。ちょうど、赤の森を彷徨い続け半年が過ぎた頃だろうか。
その頃の僕は一体、僕が存在するのはどちらの世界なのか分からなくなりつつあった。
ーーーどこからいらしたの?
手を真っ赤に染めた老婆はとても穏やかな笑顔で声を掛けてきた。