【眠らない森】短編
ーーーああ、そうさ。眠れないなら羊を数えればいい。
ーーーーなぁに、面倒になったなら殺してしまえばいいさ。
ーーー殺せる羊がいなくなったって?なら、こうすればいいさ。
僕は以前の様に身軽に動けなくなってきた体を何とか起こし、目の前の少女に耳打ちしてやる。
少女は目を輝かせ僕の話に聞き入る。
ーーーーなあに、怖がる事はない。ここで起こる事は全て夢物語なのだから。
ーーーそうだ、最後に一ついい事を教えてやろう。
ーーー赤の森を知ってるかい?
ーーーああ、そうだ。何もかもが真っ赤な色した赤の森へ。そこへ行くといい。
ーーーそこに一本だけ緑色した木がある。不思議な事にその木だけは決して赤に染まらないんだ。
ーーーその目で見てみるがいい。
ーーーー今夜は少し話しすぎて疲れたようだ。そろそろ一人にしてくれないか。
ーーーああ、逢えるとも。君とは何もこれでお別れじゃない。近いうちにきっと逢えるさ。
ーーー赤の森でね。
少女へそう告げた僕は心の中で呟く。
これで僕も漸く眠れそうだ。
【眠れぬ森】
終