御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「これは?」

鈴城君は紙袋を目の高さまで持ち上げた。

「おにぎり。朝、ばたばたしててご飯食べてなかったでしょ?
バスの中で食べて」

受け取ってもらえなくてもいい。ただ自分がしたくてやっただけ

だから拒否されたら自分が食べれば良いと思っていたが、鈴城君は紙袋を突き返したりは

しなかった。

「ありがとう」と言って嬉しそうに袋を開けて頷いてた。

そして顔を上げると私をみて

「のあ、俺がいない間一人だけど大丈夫か?」と予想もしない事を言われた。

「だ、大丈夫よ。結婚する前だって一人暮らしだったんだし
久しぶりの一人を満喫するよ」

本当は全く逆で、こんな大きな部屋に一人は寂しい。

一人暮らしの時はなんとも思わなかったけど

2人で暮らすようになってからは違っていた。

もちろん一緒にご飯を食べたり、TVみて一緒に笑ったりしないけど

それでも家に鈴城君がいるだけで安心出来た。

だけど寂しい顔は見せられない。

だから胸を張って、腰に手を当てた。全然問題ないってね・・・

「はい、はい。俺のいない間満喫しろよ。・・・じゃあな」

鈴城君は苦笑いしながらスーツケースを持った。

「いってらっしゃい」

「行ってきます」


バタン・・・


鈴城君は行ってしまった。

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