御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「なんかすげーなこれ」

目の前に並べられた料理を見ながら鈴城君が嫌みな笑顔を浮かべ感心していた。

「な、何か問題でも？」

わかってる。ツッコミどころ満載だし、自分でもそう思う。

だけど、素直に言えず、淡々と嫌みっぽく返す。

「いや、一瞬ここは旅館かと思ったよ」

「はいはい、嫌ならたべなくてもー」

卵焼きののった皿を取ろうとするとさっと箸がのび、卵焼きは鈴城君の口の中へ･･･

「うまっ！この卵焼きめちゃくちゃうまい」

目を大きくしながら美味しそうに卵焼きを食べた。

「そ・・そう？」

本当は飛び上がりたくなるほど嬉しくなったが、ここは堪えて素っ気ない返事をする。

鈴城君は箸を休めることなくご飯を食べ続け

私は食べている姿を見ていた。



「ごちそうさまでした」

「は、はい」

箸を置くと手を合わせた。

私の作った朝食を完食した。

私は鈴城君の食べ終えた食器を片付けようと席を立ち、食器に手を伸ばす。

すると待ったがかかった。

「片付けは俺がやるよ」

鈴城君は立ち上がり食器を重ねそれをキッチンへと持って行った。

その間の会話はなく、聞こえるのは皿の重なり合う音と水の音だけ。

帰ってきても笑顔を見せるわけもなく

アメリカでの土産話をするわけでもない。

先日の電話でのドキットするような甘さは全くない。

やっぱりあれは

アメリカで気持ちが大きくなって普段言わないことも言えちゃう

魔法にでもかけられていたんだ。

そして日本に戻って魔法が解けて1週間前と変わらないいつもの鈴城君に戻った。

ってことか・・・・・・
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