御曹司はかりそめ若奥様を溺愛中
「直美・・・風間課長は直美とどうしたいって言ったの?」

私は直美に尋ねた。

「このまま関係を続けたいって・・・」

『はぁ?』

私と友香の声が重なった。

「ちょっと課長何考えてんの?だって・・・奥さんと別れないんでしょ?
奥さんとも別れない、妊娠しました。でも直美とも別れない・・・こんな話あり得ない」

友香が声を荒げる。

私も同じ意見だ。こんなわがままな話がある?

直美の幸せを何一つ考えていない発言としか思えない。

「ねえ・・・直美はどうしたいの?」

直美はカラになったジョッキを両手で握る。

「妊娠って聞いた途端、終わったって思ったし、彼にも別れるって言おうとしたの・・・でも」

「言えなかった?」

友香の言葉に直美は頷いた。

2年間直美は課長一筋だった。

元々リスクの大きい恋で、私も友香も手放しで応援は出来なかったけど

直美がそれでも幸せだというのならと目を瞑っていたけど

「彼との将来は望めないってわかっているんだけど・・・一人になるのが怖いの」

答えをすぐに出せない直美はうなだれる。

でも直美の気持ちがわからないでもない。

私も鈴城君との別れが近づいている。直美と一緒で一人になるのが怖い。

だからこれ以上は何も言えなかった。

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